撮影には不確定要素が沢山あります。自作オブジェを屋外に設置し写真を撮る – という手法の場合、最も重視するのは、オブジェとロケーションの美術的なマッチングです。
新作 COLOSSUS でもこの手法を使ってますが、どんなに大掛かりな準備をしても、仕上がりが美術面で合格とならなければ作品としては意味がありません。なので美術面のチェックに加え、技術的な問題の洗い出しを目的に「プレ撮影」を敢行することがあります。
プレ撮影は、本番撮影に向けて行う事前の作業(≒テスト撮影)です。ロケハンはさらに前にしてあるので、ロケハンと本番撮影の中間の工程となります。
この日のプレ撮影で確認したかったのは、
- ロケーションとオブジェの美術的なマッチング
- 撮影予定地の風の強さ(盆地がどの程度風を防ぐか)
- 逆光気味の光線の1日の変化
- 現場の資材運搬の導線
- 人の目の多さ(人通りの有無、撮影可否の見極め)
- 駐車エリア・トイレの場所
プレ撮影をすることで日数とコストが余計にかかりますが、不安がある場合ほどプレ撮影をした方が本番でトラブルを避けることができるので有効です。
しかし、プレ撮影にもデメリットがあります。それは、本番日よりプレ日の方がコンディションが良く感じられてしまうことです。本番撮影の日に「以前の方がよかった」と余計なことを考えてしまうとメンタル面でマイナスです。
写真は「一回性」に賭けるアートなので、エイヤッ!という思い切りが欠けるとよいことはありません。準備が過ぎるせいでかえって迷うというジレンマです。
そして、この日のプレ撮影ではロケーションがベスト中のベストだったにもかかわらず、美術面でのマッチングに問題があると思うに至り、このロケーションで本番撮影をしないという結論を後日下しました。
プレ撮影時に念のため本番用フィルムでも1枚だけ撮ったので、もしかしたら将来このイメージを世に出してもよいと思う時が来るかもしれませんが、現状では満足していません。
基本的に全撮影の60パーセントくらいは、プレ撮影、または本番撮影に問題が起こり、撮影は失敗に終わります。収穫率 40%。野球なら4割打者ですが、この数字は一体どうなのでしょうか。