撮影「きっかけ」のサイン 少しずつ気持ちを繫いでいでいく 

旗の興奮を追体験するための装置 ©️ YOSHIKI HASE
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はためきが心を躍らせる

「きっかけ」に取り組むかスルーしてしまうで、数年後、作家としての状況が大きく変わります。

何かを見たときにセンセーショナルな体験だった場合、それが一瞬の出来事であっても「きっかけ」かもしれません。

僕はあるとき「旗(はた)」にまつわる体験をしました。インドの裏路をウロウロして迷い込んだ空地で、無数の白い旗が宙を舞っているのを見たのです。正確には旗ではなく洗濯物だったのですが、とにかくその「はためき」に興奮を覚えました。

インドの洗濯場の「はためき」

そしてその後も何度か同じような「はためき」にまつわる体験を繰り返した僕は、この視覚体験を写真に移行するため、とりあえず自分で「旗」を作ってみることにしました。このテキスト冒頭の写真がその記録です。

そして先月個展でタイのバンコクに行った時にも、再び素晴らしい旗のはためきを見ました。何度も何度も「きっかけ」と出会っているように感じます。

この「はためき」との出会いが結果として実った DESSIN(デッサン)という作品があります。しかし DESSIN は、もう少し風景自体のあり方にフォーカスをしたもので、「はためき(=うごき)」にダイレクトに向き合ったものではありませんでした。

そして夏の終わりに、再び「はためき」を自分で再現してみました。高さ4メートルの木材にただ紐を数本結びつけるだけです。風にたなびく紐。

半日その様子を眺めていました。この映像(下)に映る以上のことは何も起きません。ただ風にたなびく紐のうごきがあるばかりです。そして心は踊り続ける。

紐が風になびく姿をただ眺める

僕のメディアは写真なので、実際、たなびく姿をどのように作品に反映していくのかは難しいところです。

「はためき」が心に及ぼす効果を検証したいとは思っていませんが、それでもこんなに簡単に気分を高揚させる「うごき」とは何なのか。雲の動きにも似たものかもしれない。

些細な「きっかけ」を無駄にしないように、できる限り追いかけて、気持ちと時間をリレーしていきたいと思っています。

そしていつの日か、このことについてまったく話をしなくなったら、制作が軌道にのっているか、もしくはアイデア自体が壊れてしまったかのどちらかだと思います。

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