Nov18 - Jan07  Solo Exhibition - COLOSSUS- Bangkok Thailand

保存版 〜 長谷良樹 式 個展のひらき方 vol.2 作品ステイトメントを書く  正解は常に作品の外側に

目次

とりあえずではない

作品を作って展示をするときは、作品ステイトメントが必要になります。

ギリギリになって「ステイトメントも書かないと! 」 と思うことがあると思いますが、ステイトメントは- とりあえず – つくるものではなく、作品の本体に匹敵する大切なものだと思っています。

ステイトメントをつくるタイミングは、

  • 作品が完成したとき
  • AWARDに応募するとき
  • 個展開催のとき

などがあると思いますが、ステイトメントが大切なものだという前提に立てば、作品の制作が進む最中に書くのもありだと思います。修正をどんどん繰り返しながら作っていくのがステイトメントです。

どちらにせよ、ステイトメントは - とりあえず - のものではないということは宣言したいと思います。

自分と作品ばかり見つめすぎない

では、ステイトメントとは何でしょうか?

色々な捉え方があると思うのですが、僕が作品を作り続けるなかで思いついたことを、簡単にご紹介したいと思います。あくまで様々な考え方の一つとして捉えてください。

5年くらい前まではなかなかステイトメントを上手く書くことができず、 僕もこの作業は好きではありませんでした。その理由は、ステイトメントを書く際の基本的な態度に問題があったからでした。

それは、 

作品を説明しようとしていた  

ということです。

ではなぜ作品を説明するのが問題だったのか。

作家はひとりの人ですが、一方、僕たちがつくる作品も物理的なモノ以上の何かであり、物語を閉じ込めた一つの人格のようなものと捉えることができます。つまり、作家と作品は互いに人格を持っているということです。

人同士の関係と同じで、親密な2者の関係には必ず2者を包みこむバックグラウンドがあります。例えば、考え方、共通の興味、共有する価値観、人生観など。つまり作家と作品の関係性も、決して当事者だけで完結するものではなく、当事者同士をつなぎ合わせる共通のバッググラウンドのうえに成り立っていると言えます。

つまり、ステイトメントは、

作家・作品について書くことではなく、作家・作品を包みこむバックグラウンドについて書くこと

だということです。

ステイトメントの手順と整理法

もう少し具体的な例を出します。例えば、あなたの前に2人の男がいて、2人をよく知りたいと思うあなたは、名前や出身地、職業を尋ねました。しかし、今ひとつ2人の個性やキャラクターが見えてきません。

そんな時、2人が「登山」をすることを知ったあなたは、山について色々尋ねていきました。すると、1人は「山の厳しいところが好き」と言い、もう1人は「山では自分と向き合うことができる」と言ったとします。それを聞いたあなたは、2人が独立心や自己内省を大切にしているという印象を抱きます。

この場合、出身地、職業を尋ねるのが、作家や作品を直接知ろうとすることに当たります。それに対し、話題を2人のことから「山」に移し、「山」について話していくのが、作家や作品のバックグラウンドを探ることに当たります。

バックグラウンドについて話すうちに、結果として、トピックの全貌が分かり、作家と作品のことも間接的に分かってくるということです。

手順をまとめると、

手順1 

作家(=自分)&作品の説明をひとまず横におく

手順2 

作家・作品のバッググラウンドが何かを突きとめる
(バックグラウンドとは、作家・作品を包む環境/作家のおかれる状況/作家・作品が関係する出来事など

手順3

バッググラウンドについて、全体的にどういうものか、どんな性質か、どんな歴史か、一般論を説明する
(バックグラウンドについての一般論で、作家・作品についての説明はしなくて良い)

手順4

バックグラウンドに関連して、自分がとった行動、写真に撮った内容、得た結果、気づき、自分の見解を書く。
(結果的に、作品の説明、プロジェクトの結論めいたことになる)

作品の答えは外側にある

それでも、実際にやってみると難しさは残るはずです。

上記のように手順をクリアに識別できないこともありますし、また非常にシンプルな作品の場合(それ自体は全く悪いことではありません)、ステイトメントの必要性が実際にあまりないこともあります。

いずれにしても、作品の内側にすべての真理があると捉えるより、作品はあくまで外部の世界の一部であるという視点が必要なのだと思います。

僕は「DESSIN」という作品のステイトメントを書くのに半年くらいかかりました。実際に完璧なものが書けているかは分かりません。また、あくまで主役は写真であるとも思っています。

しかし、ステイトメントを上手く書けた時には、作品を邪魔するものには決してなりません。また内向き指向になりがちな作家にとっては、外部の世界がどんな仕組みかというのを確認する機会にもなります。

作家が直感で行動し本領を発揮できた時には、知らないうちに法則や仕組みにたどり着いていることがあります。これがアーティストの真の能力で最高の瞬間です。しかしそれでも、作品や作家が最上位な訳では決してなく、それらも大きな世界の一つの現象にすぎないことを知るのが、ステイトメントの真の意義なのだと思います。

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